2026.05.01
研究レポート
CIの歯周病菌に対する歯周病症抑制効果
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- ヒトの歯周病菌であるPorphyromonas gingivalisと伴侶動物(特にイヌ)の歯周病菌である P. gulaeに対するCIを含む食品素材であるCI-Dextran mixの影響を評価しました。
- 濃度5%までのCI-Dextran mixは歯周病菌の生育には影響を与えませんでしたが、バイオフィルム形成を著しく抑制し、口臭の原因である硫化水素およびメチルメルカプタン産生を減少させました。
- 歯周病菌に刺激されたマクロファージが産生する炎症性サイトカイン量はCI-Dextran mix存在下では抑制されました。
- 責任著者である麻布大学の福山先生に作成いただいたスライドはこちら(PDFファイルが開きます)。
背景
歯周病はヒトおよび伴侶動物(特にイヌ)に広く見られ、主要な病原菌として、ヒトではPorphyromonas gingivalis、イヌではP. gulaeが挙げられます。これらの細菌は歯面にバイオフィルム(歯垢)を形成し、硫化水素やメチルメルカプタンを生成して口臭にも寄与します。さらに宿主免疫細胞の炎症性サイトカイン分泌を刺激することで、歯周炎症を悪化させます。そこで本研究では、CIを含む食品素材であるCI-Dextran mixのバイオフィルム形成阻害能がヒトやイヌの歯周病菌によるバイオフィルム形成、口臭原因物質の産生、炎症性サイトカイン誘導に及ぼす影響をin vitroで評価しました。
試験内容
歯周病菌の増殖に対する影響
歯周病菌の生育に対する影響を評価するため、P. gulaeまたはP. gingivalisを0~5% CI-Dextran mix存在下で短時間培養し、ATP依存性発光を利用した細胞生存率アッセイを実施し、歯周病菌の生存率を確認しました。
歯周病菌によるバイオフィルム形成に対する影響
歯周病菌のバイオフィルム形成に与える影響を評価するため、P. gulaeまたはP. gingivalisを0~5% CI-Dextran mix存在下で24時間培養した後、クリスタルバイオレット法でバイオフィルム形成量を定量しました。バイオフィルムの構造を観察するために走査型電子顕微鏡を、歯周病菌の生存率を確認するために細菌の生死によって染め分けた後に蛍光顕微鏡を用いて観察しました。さらに、バイオフィルムの主成分である不溶性グルカンの産生量をフェノール硫酸法により定量しました。
歯周病菌から産生される口臭関連物質に対する影響
硫化水素およびメチルメルカプタンを口臭原因物質とし、P. gulaeまたはP. gingivalisを0~5% CI-Dextran mix存在下で24時間培養した後、培養容器のヘッドスペースガスを採取し、ガスクロマトグラフィーで口臭原因物質を定量しました。
歯周病菌による炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響
CI-Dextran mixの抗炎症作用を評価するため、マウスまたはイヌ由来のマクロファージ培養液にP. gulaeまたはP. gingivalisを0~5% CI-Dextran mixとともに添加し、24時間後に培養上清を回収し、炎症性サイトカインであるIL-1βおよびIL-6濃度を定量しました。
結果と考察
歯周病菌の増殖に対する影響
CI-Dextran mixは濃度5%までP. gulaeのATP活性を有意に低下させなかったことから、CI-Dextran mixはP. gulaeに対して直接的な殺菌効果を示さないことが示唆されます(図1A)。一方、P. gingivalisでは1時間の培養ではATP活性は濃度依存的に減衰しましたが(図1B)、この減少幅は殺菌剤で通常観察される値よりも著しく小さいことから、CI-Dextran mixは細胞死を誘導するのではなく、代謝を抑制することが示唆されます。総じて、CI-Dextran mixは歯周病菌に対して直接的な殺菌・抗菌作用を持たないと考えられます。

図1 歯周病菌の生育に対するCI-Dextran mixの影響(引用文献Fig. 1A, B)
(A) P. gulaeのATP活性
(B) P. gingivalisのATP活性
歯周病菌によるバイオフィルム産生に対する影響
P. gulaeまたはP. gingivalisの生育はCI-Dextran mixに直接影響を受けないにも関わらず、バイオフィルム形成量はCI-Dextran mix存在下で著しく減少しました(図2)。走査型電子顕微鏡観察では、CI-Dextran mix非存在下で形成されたバイオフィルム(図3左Buffer)は緻密な多層構造が観察される一方、CI-Dextran mix存在下で形成されたバイオフィルムは細菌のクラスターは粗くなり、バイオフィルム構造も破壊されていました(図3左CI-Dextran mix 5%)。蛍光顕微鏡では生きている細菌は緑色、死んだ細菌は赤色で観察されますが、CI-Dextran mix 存在下ではほとんどの細菌が緑色、つまり生存していることが確認されました(図3右CI-Dextran mix 5%)。さらにバイオフィルムの主成分である不溶性グルカンの産生はCI-Dextran mix存在下ではいずれも有意に減少しました(図4)。以上より、CI-Dextran mixは殺菌作用を示さずにバイオフィルム形成を直接阻害すると考えられます。

図2 歯周病菌のバイオフィルム形成量に対するCI-Dextran mixの影響(引用文献Fig. 1C, D)
(C) P. gulae
(D) P. gingivalis

図3 P. gulaeの走査型電子顕微鏡および蛍光顕微鏡観察像(引用文献Fig. 1E)
(左) 走査型電子顕微鏡観察像
(右) 蛍光顕微鏡観察像。緑色は生きている細菌、赤色は死んだ細菌を示す。

図4 歯周病菌による不溶性グルカン産生量(引用文献Fig.1F, G)
(F) P. gulae
(G) P. gingivalis
歯周病菌から産生される口臭関連物質に対する影響
CI-Dextran mix存在下において、P. gulaeおよびP. gingivalisの硫化水素およびメチルメルカプタン産生量は著しく減少しました(図5)。メチルメルカプタンとCI-Dextran mixを共存させた際、CI-Dextran mixはメチルメルカプタンを直接中和しなかったことから、CI-Dextran mixは化学的脱臭作用を持つのではなく、歯周病菌のバイオフィルム形成阻害による二次的影響の可能性が考えられます。

図5 歯周病菌によるメチルメルカプタンおよび硫化水素産生量(引用文献Fig. 1I, J)
(I) P. gulae
(J) P. gingivalis
歯周病菌による炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響
P. gulaeおよびP. gingivalisで刺激したマウスおよびイヌ由来マクロファージは、刺激していないマクロファージと比較して炎症性サイトカイン(IL-1βおよびIL-6)分泌量は著しく増加しますが、CI-Dextran mix存在下では細胞生存率に影響を与えないまま、用量依存的に炎症性サイトカイン分泌量を抑制しました(図6; イヌ由来マクロファージの結果のみを示す)。

図6 歯周病菌刺激による炎症性サイトカイン産生量(引用文献Fig. 2C, D)
(C) P. gulae
(D) P. gingivalis
以上より、本研究ではCI-Dextran mixは歯周病菌によるバイオフィルム形成、口臭原因物質産生、炎症性サイトカイン誘導を抑え、歯周病の進行を効果的に予防することが実証されました。このことから、CI-Dextran mixがヒトや伴侶動物における歯周病予防において 有望な成分であると考えられます。
引用文献
Toyooka et al. (2025) Cyclodextran prevents Porphyromonas gulae and Porphyromonas gingivalis induced halitosis and cytokine secretion via direct inhibition of biofilm formation. Frontiers in Oral Health. 6: 1713668
https://doi.org/10.3389/froh.2025.1713668
※本内容は当社製品の効果効能をうたうものではありません。
※本内容は食品または化粧品業界の関係者並びに関連する業務に従事している方への情報提供を目的としたものであり、一般消費者の方に対する情報提供を目的としたものではありません。
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