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CI(サイクロデキストラン) / 研究レポート

2026.02.24

研究レポート

CIのミュータンス菌によるう蝕抑制効果

  • #GTF阻害
  • #ラット試験
  • #口腔ケア
  • #歯垢抑制
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  • ミュータンス菌が持つGTF酵素および一部のドメインの組換えタンパク質を作製し、CI存在下で基質を加えると、その活性は有意に減少しました。
  • CI存在下でミュータンス菌を培養すると、歯垢の原因となるバイオフィルム形成量および密度が減少し、脆くなりました。
  • う蝕誘発モデルラットをCI添加飼料もしくはCI添加自由飲水で飼育すると、プラークインデックス(歯垢の付着具合)およびう蝕スコアは有意に減少しました。肉眼所見においても、CI非添加群では重度のう蝕が認められた一方、CI添加群では軽度のう蝕のみが観察されました。

背景

ヒトのう蝕における主要な病原体であるミュータンス菌 (Streptococcus mutans) はその細菌表面にGTFBGTFCGTFDといったGTF酵素を持っており、GTFBGTFCによるグルカン合成によって歯面に付着し、歯垢の原因となるバイオフィルムを形成します。これらのGTFはスクロースを結合・加水分解するドメイン (CAT) と、グルカン結合ドメイン (GBD) から成ります。CIはこのようなGTF酵素の働きを阻害し、バイオフィルム形成を抑制しますが、そのメカニズムは解明されていません。
そこで本研究では、GTFBの組換えタンパク質 (rGTFB) CATの組換えタンパク質 (rCAT) を用いてCIによるGTF活性阻害メカニズムおよびS. mutansに感染したラットにおけるスクロース誘発性う蝕の発症過程を検討しました。

試験内容

in vitro試験1】CI存在下における組換えタンパク質のグルカン生成量
まずはrGTFBrCATを作製しました。rGTFB1%スクロースおよび01% CI存在下で培養し、生成されたグルカンを定量しました。また、015mM スクロースおよび0.25% CI存在下でも培養し、生成されたグルカンを定量しました。
rCAT
2.5%スクロースおよび01.25% CI存在下で培養し、スクロースが加水分解されて放出されたグルコース量をNelson-Somogyi法により定量しました。

in vitro試験2】CI存在下におけるS. mutansの増殖速度およびバイオフィルム形成量
S. mutans02% CI存在下で培養し、600 nmにおける吸光度を1時間間隔で測定することで増殖速度を算出しました。
S. mutans
1%スクロースおよび010% CI存在下で培養し、形成されたバイオフィルム量をクリスタルバイオレット法により定量しました。
さらにヒト唾液コーティングしたチャンバー内でS. mutans0.5%スクロースおよび010% CI存在下で培養し、形成されたバイオフィルムにおいて菌体やグルカンを染色して共焦点レーザー顕微鏡で観察しました。
形成されたバイオフィルムの物理的強度を評価するために、ハンディ超音波破砕装置を用いて1分間超音波処理しました。上清を吸引除去した後、プレートに残ったS. mutansを回収し、寒天培地に植菌することでカウントし、バイオフィルムにおける総菌体数に対する残存率を算出しました。

【ラット試験】CIがう蝕誘発モデルラットに与える影響
S. mutansを感染させたラットに46%スクロースを含むう蝕誘発性飼料を自由摂取させることでう蝕を誘発しました。ラットは以下のようなグループに分けて飼育しました。CIは飼料または飲水で摂取しました。およそ8週間飼育したのち、プラークインデックス(歯垢の付着具合)やう蝕スコアを評価しました。
・グループCI摂取無し
・グループB 0.625% CI摂取
・グループC 1.25% CI摂取
・グループD 2.5 CI摂取
・グループE 5% CI摂取

結果と考察

in vitro試験1】CI存在下における組換えタンパク質のグルカン生成量
rGTFBによるグルカン生成はCI濃度依存的に抑制され、1% CI条件では約75%抑制されました(図1A)。また、スクロース濃度に関わらず、CI存在下ではグルカン生成量は抑制されました(図1B)。
rCATによるグルコース放出量(=スクロース加水分解量)はCI存在下では有意に抑制された(図2)ことから、CIの存在によりCAT活性が低下し、GTF阻害に繋がることが考えられます。

1 CIrGTFB活性抑制効果(引用文献Fig. 1
(A) 0% CI
群と比較して*p<0.0001
(B)
同じスクロース濃度におけるCI非添加群と比較して*p<0.01, **p<0.001


2 CIrCAT活性抑制効果

0% CI群と比較して *p<0.05, ***p<0.0001(引用文献Fig. 2C

in vitro試験2】CI存在下におけるS. mutansの増殖速度およびバイオフィルム形成量
S. mutans
の増殖速度はCI濃度0.125%以上で抑制されましたが、最終的な増殖量はいずれの濃度でも同等だった(図3)ことから、CIS. mutansに対する殺菌効果を持っていないと示唆されます。
S. mutans
をスクロースおよびCI存在下で培養した際には、CI濃度依存的にバイオフィルム形成量は減少し、10% CI条件では約70%減少しました(図4)。
形成されたバイオフィルムの共焦点レーザー顕微鏡観察像はCI存在下で形成されたものはそうでないものと比べ、構造的に薄く、低密度でした(図5)。また、菌体とグルカンを染め分けた観察像では、CIの有無にかかわらず菌(緑)量はほぼ同等だった一方、CI非存在下では豊富に存在したグルカン(赤色)はCI存在下では著しく減少しました(図6)。
このようにCIによってバイオフィルム構造が粗くなっていることから、物理的強度を評価するため超音波処理を行いました。その結果、CI存在下で形成されたバイオフィルムではCI非存在下で形成されたものと比べて、プレートに残存できたS. mutansの割合は有意に減少した(図7)ことから、CI存在下で形成されたバイオフィルムは脆弱であることが示されました。


3 CIS. mutans増殖におよぼす影響

同じ時間におけるCI非添加群と比較して*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001(引用文献Fig. 3


4 CIS. mutansによるバイオフィルム形成量におよぼす影響

0% CI群と比較して *p<0.0001(引用文献Fig. 4


5 形成されたバイオフィルムの共焦点レーザー顕微鏡による3次元観察像
(引用文献Fig. 5A


6 バイオフィルムを構成する菌体およびグルカンの共焦点レーザー顕微鏡による3次元観察像

緑色が菌体、赤色がグルカンを示す(引用文献Fig. 6


7 CIS. mutansによるバイオフィルム粘着性に及ぼす影響
0% CI群と比較して *p<0.05, **p<0.01(引用文献Fig. 7

【ラット試験】CIがう蝕誘発モデルラットに与える影響
飼料または飲水にCIを添加したすべての群のラットにおけるプラークインデックスおよびう蝕スコアは、CIを添加していない群よりも有意に減少しました(図8; 飲水試験の結果のみを示す)。肉眼所見においても、CI非摂取では重度のう蝕が認められた一方で、5% CI摂取群では摩耗と軽度のう蝕が観察されたのみでした(図9)。


8 飲水に添加したCIがラットの歯垢蓄積およびう蝕に及ぼす影響
(A) プラークインデックス, (B) う蝕スコア
いずれも0% CI群と比較して***p<0.0001(引用文献Table 2より再構成)


9 ラットの下顎

(A) 0% CI飲料摂取, (B) 5% CI飲料摂取群(引用文献Supplemental Fig. 1


引用文献

Asaumi et al. (2025) Inhibitory effect of cyclodextran on the induction of dental caries by Streptococcus mutans. Journal of Functional Foods. 135: 107077
https://doi.org/10.1016/j.jff.2025.107077

※本内容は当社製品の効果効能をうたうものではありません。
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